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ラブシック

 ポン……
 そろそろ夕刻に差し掛かる頃、書類の決裁にひと段落がついた犬飼の携帯にSNSからメッセージが入る音がした。
 勤務中ではあったが、少し休憩を入れようと思っていたところだったので、それを言い訳に受信されたメッセージを開いていく。
 送信相手の名前を見た途端、犬飼の表情が明らかに変わったが、幸いなことにそれに気づいた者はいない。
 送信相手は旬から。
 実は昨夜旬と少し諍いを起こしてしまい、今朝の旬の機嫌は地の底よりも悪かった。
 今回は自分が全面的に悪いので、平謝りをしたのだがタイムリミットまでには許してもらうことはできなかった。
 後ろ髪を引かれる思いで出勤をしたのだが、── 本音としてはあの状態の旬を一人置いて行きたくはなかったが、それをすると更に恋人の機嫌が悪くなるので渋々出勤した ──ずっと気になって仕方がなかった。
 だから旬の方からメッセージを貰えるとは思わなくて、あからさまに安堵の息を吐き、何気に画面を開いた。
『晃さんのばか。 今日も遅かったらもう知りませんから』
『 俺をこんなにしたのは晃さんなんだから責任取ってください』
 やはり昨夜のことをまだ怒っているようだ。
 直ぐに返事を入力しようとして、それよりも先に一枚の画像が送信されてくる。
 ガタッ。
「課長どうされました?」
「い、いや、何でもない。足が当たっただけだ」
 思いの外、大きな音が出てしまい、同じフロアのスタッフに訝しがられながらもどうにか体裁を整える。
 しかし内心は旬から送られてきた画像に動揺を隠せなかった。
 送られてきた画像は旬の際どい姿。
『胸が痛くて、この痛みは晃さんじゃなきゃ治せないんだから』
『今日は早く帰って来てください』
 続くメッセージを読むのももどかしく、急いで返信を送る。
 その後の仕事は鬼神の如し表情でスタッフを慄かせながら処理を終わらせ、終業のチャイムと共に周りの声も振り切り、恐ろしい速さで協会内を走り去っていく犬飼の姿が複数のスタッフに目撃されたという。


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何かの画像見てふと思い付いた犬旬話。何で喧嘩したかは想像にお任せです。
この後、犬飼さんを困らせようと最初は彼シャツはだけて胸チラ画像を送信して、その後一時間ごとに別アングルで段々エスカレートしていく画像を送っていくと言う裏設定もあります。
最終一人遊びしでかしそうな画像が送られてきたところで家に飛び込んで、旬の前でスライディング土下座する犬飼さんがいますw


初出:2020.8.29

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