top of page
── 沖の屋
アオハル
忙しい人だから彼の職場だからと会えるとは限らない。しかも自分が訪れるのは広大な敷地内のほんの入り口付近だけ。滞在時間だって一瞬だ。
だけど期待していなかったといえば嘘になる。
来客用の駐車スペースから協会の受付までの数十メートルの距離を不審者と見間違われない程度に周囲に目を向けて。少しでも彼に似た背格好を視界の隅で見留めては不規則になる心拍音。
でも結局会えることはなくて。
それでも、彼がすぐ近くにいるかもしれないと思えば、それはそれで楽しくて心が躍った────。
***
忙しい人だから、彼が書類を提出に来るとは限らない。しかも彼が訪れるのは広大な敷地内のほんの入り口付近だけ。滞在時間も一瞬で。
だから会えること自体が幸運でしかない。
業務中に一階へ降りてエントランスを通り、社用車を駐めてある場所までの間、黒のスーツ以外の人物に目を向けて。少しでも彼に似た背格好を視界の隅で見留めては不規則になる心拍音。
しかし、今日も彼が協会へ訪れることはなかった。
それでも、彼のギルドがゲートを攻略した報告を聞けば、報告書に目を通す面倒な業務も楽しいと心が弾んだ────。
**********
突発的に犬旬の日常的な何かが書きたくなって即興で書いたもの。
声をかけられなくても、遠くからでも好きな人を見れたら、その日はとてもしあわせになれますよね。
bottom of page