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── 沖の屋
妖精のお菓子
ふわふわした可愛らしい夢の食べもの。
ピンク、イエロー、グリーン、ブルー。
淡い色彩が何層にも織り成し、触ってしまえば直ぐに溶けて儚く消えてしまう。
しゅんが手に持ち、にこりと笑えばそれこそ甘い甘い砂糖菓子の王子様のようで。
「おいしいよ」
ほわんと唇を開けて一口食む。
「旬もはい」
柄の部分はしゅんが持ったまま、隣にいる旬に差し出せば、旬もまたはむりと一口食べる。
「甘いな」
直ぐに解けてなくなってしまう、後に残るは甘い砂糖の香りだけ。
別名”Fairy Floss”
「甘いけど…」
旬にしか聞こえない音で耳元に囁く言葉は、この砂糖菓子よりももっと甘い。
次は二人同時に左右から一口食む。
「旬の唇の方がもっと甘い」
パシャリ───。
白い背景布の前に立ち、夢色の綿菓子を間に麗しの王子様が二人。
動きを変える度に撮影用のカメラの音が何度も鳴り響いた。
初出:2021.07.21
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