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124話 ─ 中段 ─

 ゲートの位置が公開された。

 カルテノン神殿

 全ての始まりの場所。
 自分にしか見えないもの。ゲームのようなシステムが自分を動かしていく。
 今回も訪れる必要があるから鍵を入手することができたのだろう。
 システムが呼び寄せていることは分かっている。
 そろそろ自分の置かれている状況を把握しなければいけない時期に来ていることも。
「少し気負ってしまってたのかもしれないな」
 出かける時にいつもなら玄関まで見送ることのない母が心配そうな顔で声を掛けてきた。母には人と会うだけだと言って出ては来たが、やはり普段と変わらないと思っていても身構えてしまっていたのだろう。
 今でも鮮明に脳裏に浮かぶあのダンジョンでの出来事。少し前までは思い出しただけでも身震いする程の記憶が今はそれがない。
 自分のレベルがそこまで達したという確かな証拠でもあるが、だからと言って何も感じないわけではなかった。
 システムがゲートの位置を正確に指示してくる。
 向かうは何の因果か先日ダンジョンブレイクが起こった場所。今でも苦い記憶と後悔が身の内を苛むあの場所。
 前回とは違い今朝は日差しが強く、足元にくっきりと自分の影が見えた。
 システムが教える自分のレベルは100を超えた。
 再び訪れるあの場所に今の自分の力が及ぶのか。
 期待と不安がない交ぜとなる。
 そんな自分の心情に呼応したように不自然に揺れる己の影。
 目端に紅い筋が流れた気がした。
 もう一つ、以前と違うこと。
 それは決して自分を裏切ることのない者たちの存在。
 側に感じる彼らの気配に薄っすらと笑みを浮かべ、下を向いていた視線を正面に戻した。

「まもれ」

 それだけを言うと、目の前に見えてきたゲートへと足を向けた。

 影は既にいつもと変わらず、何事もなかったかのように静かに足元に落ちていた─────。


初出:2020.10.22

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